今日は、ウブド・ナチュラスパリゾートへホテル移動の日。
朝、早めに起きて、昨日描き上げられなかったスケッチを仕上げる。昨日始めた時より、朝日があたって、とてもいい感じ。思いのほか筆も早く進んだ。
絵が描き終わる頃、妻が起きてくる。そのまま食事に。泊まっているホテルのタンジュンサリは海に面してレストランがあるので、風の強い日は大変なことになる。今日は、まったくその最悪の条件に当てはまり、プール脇のソファー席で食事をとることにしました。
食事をしていると決まって猫が足元に寄ってくる。このホテルには猫が数匹居付いているんです。
バリの猫は額が広く、日本猫とは顔つきが違う。よくバリの土産で猫の彫り物が売られているけど、あの独特の顔つきは創作じゃあなかったんだね。まさにそういう顔をしてます。下の写真を見てもらえばわかるけど、額が広いんです。
...そう言えばうちの猫は今頃どうしているだろう。
12時まで、少し時間が空いたので、タンジュンサリとのお別れをする。僕らのお別れは、沢山の写真を撮ってあげること。シャッターを押しながら、心に情景を刻み付けた。
バリではわりと普通だけど、トイレにはドアがない。風呂も何も全てがワンルームの中にあります。
早めにフロントでチェックアウトを済ませる。電話でポーターを呼ぶとすぐに来てくれた。玄関前に手押し車を止めると、「どうもありがとうございました。また来てください。」みたいな内容の英語をしゃべりながら、握手を求められる。とても暖かい手。来るたびに思うが、ここタンジュンサリのスタッフからは、とても優しい心遣いを感じる。ハートがあるんだなー...ここの人たちは。
フロントにつくと、マネージャーのアグンさんが待っていてくれた。この人の笑顔は世界一。すばらしい微笑だ。「また来ます。」とつたない英語で告げると、うれしそうに笑ってくれた。またまた握手。そして写真をいっしょに撮ってもらった。...ありがとう。
タンジュンサリ・マネージャーのアグンさんと。すばらしい笑顔。
いつもは、約束の時間より必ず早く来ているガイドのスアルタさんが珍しく遅れている。といっても10分ほどだけど...。車に乗り込むときに、アグンさんが来てくれて、また挨拶ができた。今度は日本語で、「また来年来ます。」と言った。スアルタさんがすかさず通訳を入れてくれて、アグンさん満面の笑顔。本当にすばらしいサービスだった。
お世話になったタンジュンサリを後に車はウブドへ。
人間勝手なもので、心はもう次のホテル。どんなホテルだろう?と心が躍る。
車はウブドを外れて深いジャングルの渓谷の橋を抜ける。まさかこの道がリゾートホテルには続いていないだろうと思わせるほどの小道を抜けると、そのホテルは現れた。まさにジャングルの中。渓谷に臨む形で立てられたそのホテルは、その施設のほとんどを、急な崖に建てられていた。おかげでレストランなどからの眺めは最高。見下ろせば渓谷があり、反対側の岸の崖が、眼前に広がっている。
僕らは、その中でも、最高の立地にある、”ジャングルビラ”というコテージに泊まることができた。日本からの予約では、もう一つ下のクラスの”ガーデンビラ”だったので、なんというか、ラッキー!ですね。「空きがないので、無理です。」と、断られたはずなのに...。値段だって高いはずなんだけど。いいのかしら?
ジャングルビラのテラス。かなり広くて12畳位ある。
背景に見える丘との間には実は渓谷があり、かなりの距離。抜群の眺めでした。
ジャングルビラの広いテラスで、ビンタンビールを飲んだ後、さっそく、ホテルの敷地内を散策。
レストランは、先ほど書いたとおりだが、その下に、これまた眺めのいいプールがある。崖に面した側は、そのまま下に水が落ち込んでいて、シャープなエッジを描いている。右下の写真は、その端に立ってみたのだが、かなり恐い。だって、この下は20m位の崖。行った人は真似しないように。ホテルの管理者の人に睨まれてしまった。よく見ると、手前の石に、英語で、「プールの端に座ったり、横になったりしないように。どうなっても知りませんぜ。」と書いてあった。...まったく気づかなかった。
その後、渓谷に向かって長い階段を下りると、スパハウスがある。本当は明日、受ける予定だったが、時間がちょっと合わなかったので、その場ですぐにマッサージを受けた。マッサージは、若い女性が揉んでくれて、とてもよいのだが、なんと、全裸にならなければならない。「全部脱いでください。」なんて、ニコニコしながらおっしゃる。ドギマギしてしまった。...その後のことは、恥ずかしいので、割愛する。
ひとつ書いておかなければならないのは、バリの気候。「熱帯地方だから暑いに決まってるだろう。」というのは、大きな間違い。アスファルトに覆われた日本とは違い、土が露出しているバリでは、とても涼しい。確かに日中の陽射しの下では暑いけど、木陰に入れば涼しいし、朝晩などは、寒い位。日本であんなに暑かったのがウソのようだ。とても気持ちがいい。
夜、レストランで食事を済ませた後、コテージに戻る。
広いテラスから空を見上げると満天の星だ。
2001年宇宙の旅で、ボーマン船長が最後に言った言葉を思い出す。「Star......(降るような星だ...)。」 まさに、この言葉どおりの星空がそこにあった。雲のような天の川があんなにハッキリと見えている。リクライニングチェアを倒して横になると、視野が全て星空になる。大きな流れ星、4秒位光っていただろうか?こまかな光の粒に分解していくのが見えた。時々、蛍が尻の光を瞬かせながら飛んでいく。まるで流れ星のようだ。
人間は、こんな情景を見ると、自然に対して畏敬の念を抱く。
これは当然な現象だと思う。この大きな宇宙の中で、地球大気の霞底の、ウィルスのような存在の自分たち...。何を求め、何を悩み、どこに進んでいこうとしているのか?個人の損得勘定を越えたところに何か種としての狙いがどこかにキチンと折りたたまれ、隠されているのだろうか?
「なんて、贅沢な時間なんだろう...」
まわりに、明かりは一つもない。山の端の形は、いつも見慣れているそれではなく、椰子の木の形。見えるのは、満天の星。静寂。こんな時間は、人生の中でもめったにあるものではない。そう感じられた。...ありがとう。自然とそんな気持ちになる。
夜、満天の星を見ながら、あるヒラメキがあった。
それは、”そばに居るから、人の大きさ(良さ)ってわからないんだろうな?”ってこと。
もし星に近づけば、灼熱の地獄や、醜い岩肌が見えてくるように、人間もそんなものかもしれない。でも、こうして遠く離れて見ると、その人が持っている本来の姿が浮かび上がってくる。美しい光を放ち、すばらしい紋様を見せてくれるのだ。日本にいる沢山の友のことが頭に浮かんだ。最近、「大した人間なんてどこにもいないんでは?」と思っていたので、この発見にはちょっと驚いた。自分が気づかないだけで、きっとそこらじゅうに、光を持った魂の存在は無数に存在しているに違いない。...この星空のように。
【 旅の後半は、来週のページで 】
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