宇宙空間に浮かぶ、巨大なディスク。
その均整の取れた幾何学的な形状を見ていると、人工物のようにも見えてきます。引力と遠心力のせめぎ合いから生まれた力の均衡。周りの何者にも影響をうけずに育ったこの形から、孤高の存在感を感じます。
この銀河の眺めを特徴づけているのは、なんといっても暗黒帯です。乱れなく水平に旋回するそれは、左右周辺に至っても破綻がありません。コアの光りをバックにした暗黒帯中央部分は、少し透けて見えていて、内部の構造が見えやすくなっています。内部パターンもきちんと水平に旋回していて、本当に安定した公転をしているのがわかります。
銀河のまわりには、沢山の球状星団が存在していて、その数2000個に近いそうです。 2000個という数は、我々の天の川銀河よりも10倍程度多い数です。 この画像からは、どれが球状星団だと断定することは出来ませんが、銀河のまわりに存在している多少ボケ気味の星がそうなのでしょうか? 背景に銀河も沢山あり、この解像度では見分けるのが困難です。
銀河はその生い立ちから考えて、集団として存在します。近傍の銀河とグループを形成し、お互いに力学的影響を及ぼし合いながら成長します。しかし、このソンブレロ銀河は、たまたま距離を隔てて生まれたのではないでしょうか? 球状星団は、銀河系形成初期に生まれると言われています。銀河が生まれるときに爆発的な星形成が行われ、それらの星々が微妙な密度の不均衡により集中し、重心を見つけて回転を始める。それはそれは乱れのない微妙なバランスの上に成り立つ話しです。もしそこに、外部からなんらかの力学的な影響が加わったら、集まりかけていた星々は四散してしまうでしょう。
つまり、これほど球状星団の数が多いということは、銀河形成の初期より、他銀河の影響をほとんど受けずに育ったと言えるのではないでしょうか?
この対象には子供の頃からずっと憧れを持っていました。なんという美しい形でしょう。 自宅ベランダでCCD 撮影をはじめた時から、何度も挑戦しました。しかし、南の低空にあるため、光害や悪シーイングで思ったような解像度が得られませんでした。そして「やっとここまで出来た...」といったところです。まだぜんぜん解像度が足りません。望遠鏡の性能からするとまだその全てを生かし切れていない感じです。条件の良い日さえ掴めれば,,,
日本で撮るなら、無理して南、低空の対象を撮る必要はないんですかね。北の空を撮ってればいいのかな? 低緯度地方の人たちは、逆に北の空は満足のいく条件で撮れないんですから、自分の場所で最高の星域を極めれば良いのかもしれません。
銀河の近くにある右下の明るい星(といっても13等程度)の処理に苦労しました。ソンブレロを優先すると明らかに星が肥大化します。これをどうやって処理するかを大いに悩みました。まわりの星も同様です。今回は、このバックグランドの星像をきれいにすることの方に時間がかかっています。結局、星像の良い画像を5枚選び、画像処理も星像第一に処理し、星用のマスクを使って合成しています。おかげで星像は綺麗なものになりました。ソンブレロ自体は、リチャードソンルーシー法で思いっきり画像復元処理を行っています。