巨大な分子雲に恒星が生まれ、その一角を吹き飛ばした。
そこから漏れる光が星雲を明るく照らしています。
何十光年もの範囲を照らし出しているそれは、一つの星ではなく複数の星かもしれません。
しかし、これ程までに強く星雲を光らせているであろうその恒星は、この画像の中から見つ出すことが出来ません。それらはおそらく画像左下にある、暗黒星雲の向こう側に隠されていると思われます。暗黒星雲として見える分子雲は、密度が高いですから、まず初めにそこから星が誕生したと考えるのが理にかなっています。
しかしなぜ等方向に力が発散せず、1軸方向に力が広がったのでしょうか?
それを知る術はありませんが、もしかしたらガス濃度の薄いところから分子雲が崩れはじめ、光りが漏れているのかもしれません。つまり単にタイムラグであり、あと何万年かするとこの暗黒星雲全体が吹き飛ばされているといったことも考えられます。また、これだけの圧力がかかったのですから、その圧力を受けた分子雲が圧縮され、次々に恒星が誕生していくと思われます。
下のアップ画像をご覧ください。それらの星から吹き出した恒星風が、分子雲に複雑な変化を起こしたのが良くわかります。圧力を受けて弓状に広がっていくガス。そして、恒星の光りがガスに遮られ、放射状に伸びる影を落としているのも見ることが出来ますね。
ここで、恒星が星雲を光らせているエネルギーを考えてみましょう。
下の画像を見ていただくとよくわかりますが、青白く光っている部分は、可視光による拡散反射です。可視光の光りは、分子雲の密度が高くなると遮られ、ある範囲外には届かなくなります。ですから、ある程度の崩壊、分散が進み、光りが届く領域のみが光ることになります。少し青白く感じる光りですね。拡散反射であることから、この色は、その光りを出した星の色を反映します。
もう一つのエネルギーは、紫外線です。紫外線は分子雲に当たり水素原子を電離させ、赤く光らせます。強い紫外線を出すのは、O型やB型の青白い高温の星です。拡散反射の色と辻褄が合いますね。
ここで疑問になるのが、この紫外線は、可視光より、内壁のかなり深いところまで届いているように見えることです。赤く見える部分まで紫外線が届いているとすると、紫外線は内壁で遮られず、分子雲のもっと深くまで届いていると言うことになります。
不思議ですね〜。だって、紫外線は波長が短いので、分子雲に含まれるチリなどによって、可視光よりも影響を受け、先に進めないハズだと思うからです。ただ、チリといってもその密度は非常に低いので、あまり関係ないのかもしれませんが...
ひとつ言えるのは、可視光は拡散反射で、紫外線は水素原子を電離して自己発光させているということです。ということは、可視光は恒星のある片側しか光らないのに対し、紫外線では、紫外線が届いた場所から四方八方に赤い光りが発せられるということになります。その違いがこのような結果になっているのかもしれませんね。
もし可能なら、この空間に行って見たい。
この目でその広大な立体構造を感じてみたいです。
しかし、これら分子雲の水素原子密度は、1平方センチメートルあたり10個程度。暗黒星雲として見えるありと密度の高いところでも、100個〜数百万個です。それに対し地球上の大気に含まれる分子数は、1平方センチメートルあたり2.543x10^25個となるそうですから、その場所にいったとしても、自分の側には何にも見えないということになるかもしれません(笑)
2009年9月26日土曜日
まず一番満足出来たのが、豊富な色が出たこと。Haの赤、輝星に照らされた青、そしてそこに絡む暗黒星雲の微妙な茶色。これだけ豊富な色を持つ散光星雲は処理していて楽しいです。
今回、RGB合成を行った後、はじめにRGBのみの画像で最終イメージに近い画像までトーンカーブ等で仕上げてしまいました。そしてそれをLabモードに変更し、このL画像(以下L’画像)をターゲットとして画面の隅においておいて、本番のL画像を整えていきました。L’画像と同じ感じになるようにトーンを調整すると、最後にLRGB合成を行った際に同じイメージになるので、良い方法ですね。
この星雲のダイナミックレンジは非常に大きな物で、単純なデジタル現像だけではこのような画像にはなりません。暗部用と高輝度部用に処理した画像を、輝度マスクを使って高輝度な部分を合成しています。その際に大切なのは、オリジナルの輝度差をなるべく失わないようにすることですね。他に、HDR合成という手段も取ることも出来ます。
星像の美しさは天体写真で一番大切にしなければいけない要素だと思います。しかし、LRGB合成をする限りではこれを突き詰めるのが非常に難しいと感じます。ある程度大きな星に関しては、RGB合成の星像を使う方が良いのではないかと感じています。次回の作品では実践してみたいと思います。