沢山の露光時間をかけると、M57の周囲には、こんなにも複雑な構造が広がっていました。
何重にも重なったそのガスの広がりは、星の最後の複雑な脈動を物語っています。しかもこのような花びらのような形になるためには、恒星の表面の部分的な爆発、剥離が起こったように思えます。
そんな混沌としたガスの広がりですが、この赤いガスのエリアとその内側のブルーグリーンのエリアには、明確な境界があります。ここがつまり、爆発前の恒星のコア内での、水素ガスの境界だったのでしょう。この境界付近の水素ガスがかなりの明るさで光っていることから、最後はかなり同時期に大規模なガスの剥離があったことが想像出来ます。
今回のこの画像は、合成処理によって作られていることをご承知起きください。
中心部とこの花びらの部分の輝度差は非常に大きく、通常の方法ではこの画像のように見えることはありません。中心のリングに露出を合わせれば周辺を見ることは出来ませんし、周辺に合わせると、中心のリングは、露出オーバーで白くなってしまいます。
これが通常の処理をしたM57です。
まったく周辺の暗部は見えません。これが正しい見え方です。
輝度差の克服に苦労しました。いろいろな手法を試しましたが、結局どれもものにならず、非常に単純な合成に落ちきました。
1.まず、通常の方法で処理画像を作ります。今回は、以前撮影してあったL画像をPixInsightで画像復元処理しました。元画像には僅かなガイドエラーがあったのですが、この処理によって、消すことが出来ました。
2.周辺の暗部が写っているHa画像を作成。花びらパターンを出すためにはかなりレンジを狭めなければならず、協力なノイズ処理を行いました。
3.2.の花びら画像を赤に着色し、ベース画像に「比較明」で合成。そのままでは輝星が真っ赤になるので、星マスクで外します。その後、1.のリング画像を「比較暗」で合成しました。
以上のような方法をとっているので、暗部の花びらだけを出すのであれば、もうかなり強く出すことが出来ます。しかし、リング本体とのバランスを考えると、この程度の表現で落ち着きました。
「見えないものが見えたら、面白いだろう」と思って取り組んだのですが、美しさとはかけ離れたものになってしまいました。こんな輝度差があるものを無理矢理表現しているので、まったく自然さがないんですね。良い教訓になりました。