この星雲は、上部の青い反射星雲と下の赤い散光星雲からなっています。
上部の青く見えている星雲の真ん中にある星の光りが星間ガスで反射、散乱して青く見えています。青く見えている領域は画面全体に広がっていて、赤い散光星雲の下までも及んでいることから、この青い領域の方が赤い散光星雲よりも手前にあると思われます。そうじゃないと、赤い散光星雲にじゃまされて下部まで青い光りが届きません。
下の散光星雲は、紫外線によって自ら光っています。外観が丸っぽく見えていますが、星雲の形はもっと不定形でしょう。散光星雲を光らせている中心にある恒星の光りが球状に広がっているから丸く見えているのだと思います。この星雲の名称ともなっている「三裂星雲」ですが、星雲が3つに切り裂かれているのではなく、3方向に広がる暗黒帯が手前を横切っているというのが真相ですね。その隙間から球形に開いた星雲内部を覗いているという格好です。
もともと分子雲で一杯だった領域をこの中心星の恒星風が穴をあけたのでしょうか。 ちなみにこの中心星は、2重星です。分子雲をそれだけかきまぜたのだからいたるところで星が誕生しています。下のアップ画像は、ハッブルの写真で有名な領域です。角のように伸びる細いガスは、生まれたばかりの星から放出されているジェットだそうです。
細部の表現を優先して処理した画像
夏はシーイングが良い季節ですが、山の上の天候はなかなか安定しないです。晴れたとしても雷などがあり、夜半からしか撮影できないことが多い。よって、夏の星雲をとるのは機会が非常に限られてしまいます。もう少し前、6月頃の夜半過ぎを狙うことも出来ますが、その頃は梅雨で晴れない...やれやれ、です。 ギャラリーに夏の画像が少ないのはそうした理由からです。
というわけでこの作品は、わずかな晴れ間をぬっての撮影で、薄雲を通しての撮影が多くありました。アップの画像を見るとわかると思いますが、ガイドエラーを起こしています。トップの写真ではわざと星像をシャープにせずに、ガイドのずれをごまかしています。そのため、細部が見えなくなっています。
SBIG・STL-11000Mにはバグがあり、ビニングで撮影すると輝星の右に「タレ」を起こします。
この作品は2x2ビニングで撮っています。画像処理でわざと輝星を飽和させごまかしてているので、わからないと思いますが、実際には「タレ」が起きています。1x1ビニングで撮影すると起こりません。何度かSBIGにも問い合わせましたが改善せず、この作品以降では「ビニングは行わない」方針で撮影しています。