天の川の中に浮かぶ、散開星団と散光星雲のコンビネーション。
M16というのは、実は青く光る星々、散開星団の名称です。背景の散光星雲はIC4703という名称で区別されているようです。どちらにせよ、光とガスが織りなす美しい星域です。
中央にそびえる「ゾウの鼻」と呼ばれる特徴的なガスの柱。ハッブル宇宙望遠鏡の画像ですでに有名な場所です。この柱は、この星雲の中でも特にガスが濃いところ、星々のゆりかごです。沢山の星が誕生を待っています。ハッブルの写真を見ると一目瞭然ですが、私の写真でも、その先端部からいくつもの筋が伸びているのがなんとなくわかります。この筋の先端に星々が隠されているというのですから、途方もないスケールです。左上にももうひとつ大きな柱が右方向に伸びています。こちらは「不死鳥」と呼ばれています。
青く輝いている星は、すでに生まれ落ちた星。
きっと昔は、「ゾウの鼻」のような柱がいたるところにあったのでしょう。その中で星が生まれ、その柱は雲散霧消していったのです。星からの紫外線は水素ガスを励起させて赤く発光させ、可視光のうち青い光は、チリで反射をおこします。よく見ると赤い星雲の中、青い星々の近辺には青く光っている部分も見受けられますね。
この星々の手前に「ゾウの鼻」はあって、そのせいで、シルエットになって浮かび上がっています。 ちょうど馬頭星雲と同じ状態ですね。 その距離なんと6光年。巨大な星域です。
この星雲までの距離は、5500光年ですから、星の誕生に要する時間を考えると、すでに「ゾウの鼻」は、もう存在していないっでしょう。今そこには、沢山の青い星々が輝いているかもしれません。
掲載している各画像のスケールを記述していないのがいつも気になってました。今回から視野角(分、秒)と元画像に対してのスケール値(%)を画像右下に添えることにしました。
視野角 :Hは水平方向の視野角、Vは縦方向の視野角。
スケール:撮影したCCD元画像を100%としたときの、画像の縮小率。
今までHaで撮影するような天体のカラー画像には、かならずRedにHaを「比較明」で合成していました。 しかし今回は、新境地というか、 RGB画像のみでカラー化しました。結局その方が、微妙な色のニュアンスが出るからです。Haを混ぜてしまうと、どうしても赤が強くなり、赤ベタの画像になってしまうんですね。そうすると、とてもつまらない抑揚のない画像になってしまいます。そこで、今回はカラー画像にはHaを使わないで処理してみました。
結果は上々、微妙な色合いが現れました。赤いHaで輝く星雲が、背景に溶け込んでいく境界付近では、美しい色の変化が見て取れます。赤い星雲をバックに、ブルーに輝く星々とそれに照らされた反射光のかすかなブルー、 狙い通りでした。ただ、非常にわずかな色の差です。フォトショップでその色の差を強調してあります。
使っている機材の関係から、銀河を撮影することが多いのですが、銀河の解像度感をあげるための手法は、そのまま星雲の画像にも応用出来るのがわかりました。昨年、撮影したNGC281やNGC7380に比べ、進歩しているように思います。ただ、重なっている星の数が圧倒的であり、なおかつ明るい星が多いので、その処理は一筋縄ではいきません。ケースバイケースで、さまざまなテクニックを使わないとダメですね。決定的な解決法はいまのところ確立出来ていません。