この星雲は、活発な星形成が行われている領域です。
中央の明るい星の紫外線によって輝いている散光星雲。ちなみにこの中心星IC1590は2重星です。
全体としてとらえると、とても絵にならない星雲です。丁寧に処理をしても見栄えがしない。部分的に切り取った方がよほど迫力がある。可視光+Haだけではどうしても赤の濃淡にしかならない。だからせめて星像だけは、綺麗になるように力を入れました。
こういう赤い星雲をバックにした微光星は、変な色がついたりして難しい対象です。
これを無くすにはまずRGBのバランスをきちんと取ること。そして各RGBフレーム毎の星の大きさの違いですね。スターシャープフィルター(ステライメージ)で、RGB各フレームの星像の大きさを揃えてやることもしますが、完全に差を無くすことはできないし、星像が汚くなってしまいます。
最近僕がやっているのは、CS3のノイズフィルターをRGB画像にかけてカラーノイズを減らしてやる方法。星の周りににじんだ色をノイズとして認識し、星のハローを完全に消すことが出来ます。やり過ぎると大事な色も消えてしまうので、手加減が必要ですが。その後でLRGB合成をおこなってやれば、ハローは消せます。特に微恒星には効果的です。この作品も元は大きなハローが出ていました。
黄色い線でかいたのがIC1590から放出されているだろう恒星風の方向です。この恒星風の流れに沿って、星雲ガスの柱や、黒いかたまりが無数に形成されているのがよくわかります。
その恒星風にあたっているガスの先端には、新しく生まれた星が隠されています。もともとガスが濃かった領域が、恒星風を受けて密度があがり、原始星がうまれたのでしょう。そしてそのガスをIC1590からの恒星風によって、はぎ取られようとしている、まさにその瞬間です。そこかしこに生まれ出ようとしている星々があります。
このような状態のガスの塊を「ボックのグロビュール」と言う。バード・ボックが初めてこの濃い雲の中に恒星が隠れていることを示唆したためにこのような名前があります。
立体的に考えてみると、黒く見えるグロビュールはIC1590よりも手前にあると言えます。そうでないものは奥にある。輪郭の光り方でもそれがよくわかります。長い柱状のものは、ガスがはぎ取られ始めた初期段階ですね。恒星からの距離がある画面上部に多いです。
そして、矢印で示した部分では星が露出し始めているように見えます。ガスがはぎ取られ、外の世界に恒星が出てきた瞬間のように見えます。いろいろな過程が見えて面白い領域です。