昨年から取り組んできた、アップルの次期OSのグラフィック基盤たるQuickDrawGX。
そのテクノロジーの機能と将来性にほれ込み、グラフィックアプリケーションを開発してきました。
昨年の5月頃、そのアプリケーションのデモを千駄ケ谷にあるアップルコンピューターにて行いました。アプリケーションの名前は、”CellDraw”。ビットマップとドローデータをいっしょに扱えるもので、画像レイヤーが実装されていました。しかも、そのレイヤーが3Dソフトのように階層構造を持っているのです。今となっては、常識的なレイヤー機能ですが、その当時は、フォトショップにも搭載されていませんでした。
デモを行った相手は、アップルコンピュータージャパンの面々でしたが、大変驚きを持って迎えられ、「すぐに使いたいから置いていって欲しい。」とまで、言われました。
そして、その後から現在まで、CG制作から手を引き、プログラム開発だけに打ち込んできたのです。自宅近くに、ソフト開発のアパートを借り、没頭して作業に取り組みました。
マックワールドに出展した時のパンフレット
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その甲斐あって、どうにかフル機能を持ったアルファバージョンが完成。
今年2月のマックワールドに参考出品されました。実際に会場に立ち、いろいろな人に説明をしました。沢山の反応がありましたが、日経Macの、編集者の方には感激され、「これが完成したらぜひ教えて欲しい」と、言われました。
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一番ビックリしたのは、QuickTimeのチーフアーキテクト、ピーターハーディさんが、僕のブースに立ち寄ってくれたことです。彼は、QuickTime次期バージョンの開発の追い込み中で、そのバージョンからレイヤーの階層構造が組み込まれることを教えてくれました。その機能と、僕が作ったアプリケーションの類異性に興味をもったのでしょう。「開発に協力するから、なんでも聞いてくれ!」なんて、言われたんです。
もっと、すごかったのは、彼が、僕のブースを去った後です。
沢山の外人が押しかけてきました。...つまり、「ハーディが興味を持ったものは、なんなんだ?」ってことです。彼の動向は、すごい影響力をもっているんですね。あやしいアメリカのおじさんに、「これをアメリカで売るときは、僕が売ってあげるよ。」とか、「ハーディは、QuickTimeについて何か言ってなかった?」なんてことを聞かれました。
もう、僕は天にも上る気持ちでした。
だって、今まで、天上の人だったピーターさんから声をかけられ、認められたんですからね。しかも、周りの反応もよかったし...。
しかし、その後とんでもない事態が待っていました。
”アップル経営危機” → ”ラプソディ開発中止” → ”QuickDraw GX開発中止” です。アップルの経営は、落ちるところまで落ちていたんですね。こんなショッキングな事件はありませんでした。結局、ソフトウェア-は完成の日の目を見ることはなかったのです。
一方、この頃僕が在籍していた菁映社も、経営危機に陥っていました。
借金も抱えていて、”会社を一時解散して、そのあたりを清算してから立ち上げ直そう”という結論に達したのです。
解散が決まった後、その新会社において、「社長としてやって欲しい」と言われたこともありましたが、それもなぜか途中でキャンセル。そして、僕は、菁映社をやめることを決意したのです。このあたりのゴタゴタは、思い出すのでいやな位で、魑魅魍魎、暗躍跋扈、といったところでしょうか?とても、その内幕をここに書くことはできません。
そんな中、菁映社・日高氏が、会社を立ち上げる僕について来てくれたのです。
幕張の飲み屋で、「頑張ってやっていこう!」と、握手をしたのをよく覚えています。
... ここからライブは始まったのです。
ひとつ、忘れてならないのは、妻の助言がとても助かったこと。経理としても協力をしてもらい、会社設立のいろいろな書類も彼女に作ってもらっています。ほんと、影の功労者ですね。
上坂浩光
日高 肇
上坂みえ
この3名でのスタートになりました。
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