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 34week  2001/8/20 〜 8/25

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今週の仕事
8月20日(月)

午後、Canonさんで仮編の試写。
沢山の技術者の方にチェックをしてもらいました。そしたら、出るわ出るわ...修正意見の嵐でした。「ホー」とか「オー」という声も聞かれ、評価してもらったのはよかったのですが、以前、「こうして欲しい」と言われて、その要望どおりに作ってある部分が、「やっぱり、こうして。」とか言われたり、もう散々でした。

ため息がでてしまいます。
全ての打ち合わせが終わり外に出ると、もうすっかり暗くなっていて、スタッフサイドの打ち合わせをする気力もすでになく、後日ということで分かれました。

 

14:45
Canonさんで仮編試写
8月22日(水)

連日のCG制作の合間を縫って、テックさんで打ち合わせ。月曜日のチェック結果に対するこちらの対応方法を決めました。

僕は基本的にはCGディレクターとしてこの作品にかかわっていますが、自分が実際の制作を担当しているカットもあって、最近は、いよいよそのカットの制作の為に缶詰状態になっています。...結構つらいです。

完全に、そのカットだけの制作をしているのなら、どんなに忙しくともそれはそれで楽しいのですが、自分で作っている時でも、他のスタッフがどの程度できているのか?期日までに間に合うのか?良い絵ができているのか?など、とても心配になります。そして、こんなに忙しい時にも、新しい仕事の問い合わせは来ますから、そのために電話で話したり、見積もりを作ったり、場合によっては、仮打ち合わせもしなくてはなりません。しかも、他のスタッフからいろいろな質問が出てきますからね。もう、昼間はほとんど自分の時間がなくなります。実際に作る作業は、徹夜して真夜中でないと無理な状態になってます。

最近、こんな状態で自分は後どのくらい持ちこたえることが出来るのか?と心配になっています。いくらCGに対しての情熱が強かろうと、このままでは消耗戦のような気が。

 

10:30
電通テックさんで打ち合わせ

 

8月24日(金)

今週は本当にCanonさんづくしです。


Canon・取手事務所

今日は、Canonさんの取手事務所まで、一人で取材、打ち合わせに行きました。自宅から車で行く方が会社から行くより近かったので、そうしたのですが、久しぶりにマイペースののんびりした1日が持てた感じです。連日、CG制作の詰めで忙しかったですから、こういう外に出るような気分転換は、正直大歓迎ですよ。

打ち合わせが終わったのが夕方近くになってしまったので、会社には出社しないことを告げ、少し遠回りをして、自宅まで帰りました。途中、偶然だったのですが、”守谷”のサッポロビール工場に出てビックリ。


アサヒビール・守谷工場

実は、ここの見学コースのCG映像を以前に作ったのです。
見学者は、この円形のシアターで、3面マルチのイメージ映像を見せられるのですが、その中で、ビール酵母が発酵し、徐々にその数を増やしていくというCGを作りました。もう、10年ほど前になりますか...。パーソナルリンクスを使い、メタボールを使って、全てプログラムコントロールで成長過程を作りました。今、思い出すととても懐かしいです。

思わず、車を止めて、見学コースを見ることができないか?と受付に聞いてしまいました。結局、予約がないとダメだったのですが、また暇を見つけて来ようかなと思っています。昔した仕事とこんな風に出くわすと、面白いですね。

(予断ですが、サッポロビールの見学受付の対応は、とてもすばらしく、「申し訳ありません...」と言って、冷たく冷えた缶コーヒーを3本も頂きました。)

 

14:00
Canon・取手に取材

 

 


「千と千尋の神隠し」やっと見ました。
もう、なんというか、すごくよかった。画面から監督や、アニメーターたちの良心みたいなものが伝わってきて、抜群でした。何がよかったのかって聞かれると困るんですが、その製作者の覚悟みたいなものが垣間見えました。

音楽もよかった。久石譲という人の懐は広いですよね。毎回新しいイメージを提示している。確かに同じ材料から出来ている部分も散見されますが、こんなさまざまなバリエーションの音楽を提供できるのはすごい。

上映が終わった後、こっちは、涙をこらえるのが精一杯なのに、後ろの若いアベックは、あまり感動していない様子。「ねえー、何をいいたのかわかった?」「いやー、でも宮崎さんのアニメってこんなんでしょ?」って言ってました。

歳を重ねてわかる感情があり、その部分で今回のこの作品は、子供を持った親の方がいろいろ感じる部分があるのかもしれない。宮崎監督本人は、「10歳の女の子の為に作った。」なんて言っていますが、監督の視点でいろいろなことが評価整理され、作品になっているのですから、結局は宮崎さんの視点になり、その感じ方や考え方は大人でないとわからないのだと思います。

僕は、自分の子供と見にいったのですが、彼らはそんなには感動してはいなかった。ちょうど12,3歳なので、監督のターゲットにぴったりだんだんですけどね。まあ、感動を表に出してなかっただけかもしれませんが...。それに引き換え、僕や妻は、えらく感動し、本当にどうやって涙を誤魔化すかに苦労しました。映画館を出る頃になってもその感動は止まらず、映画の中の1シーンを思い出しただけで、またジワッと来てしまう。いったい何がそんなに琴線に触れたのだろう。特別楽しい話でもなく、ものすごいメッセージが込められているようにも見えない。それなのに、こんなに感動する。本当に不思議な映画でした。

後日、この映画の本を見つけ、読んでみました。
そこには、実際の制作現場の状況がかかれていて、結構、しんどいことが沢山あったのだなーと、わかりました。映像の制作現場ですから、僕らがいつも直面しているような問題が同じように発生し、人と人との問題も起こっている。とても身近に感じました。特に、宮崎さんと作画監督のxxさんとの確執は、相当なものがあったようですね。監督が求める方向性と、作監の価値観が食い違いを見せ始めていた。そんな中で、あまり口も利かずに制作は進行していったそうです。そんな中で制作を行ったなんて、考えただけでも恐ろしい。でも、本気でクリエイティブなことをしたら、全部考えが一致する方がおかしい訳で、こういうことは避けられないことなんでしょうね。

しかし、さまざまな困難を乗り越えて、これだけのものを作り上げたのだから、宮崎さんという人はやはり只者ではない。

関わった全てのスタッフに僕の最大の賛辞を捧げます。
すばらしい作品でした。