海底からせり上がった海嶺の頂上が界面に顔を出している。
なぜか、私にはそんな風に見えます。
暗闇の中にこんな複雑な形状を隠していたという意識が、深い暗い海のそこの海嶺を思い起こさせるのかもしれません。説明もしやすいので、みなさんもそう考えてください。これは、海嶺を海面から見ているのだと...
海上に顔を出しているのが、ハッブルの画像でも有名なNGC1999です。
ガスの密度が高い部分から恒星が生まれるとすれば、まさにここが一番ガスの濃いところだったのでしょう。私の写真では露出が飛んでしまって見ることが出来ません。詳細は下のハッブルの画像をご覧ください。
上) (C)Hubble Heritage Team 下) 私の画像。
* 明部用に別処理をしてあります。周りの星雲がいかに暗いかが解ると思います。
生まれ出た恒星が周りのガス雲を照らしているのがわかると思います。ハッブルをはじめ、いろいろなサイトには、「恒星の手前に暗黒星雲がある」と書かれています。つまりこの黒い部分は暗黒星雲だと言うのです。しかし私には、「ガスに空いた穴」に見えます。ガスの光り方は、そこに内側に向かう法線、つまり内側に向いた面を感じさせるからです。もし手前にガスがあるとしたら、その輪郭に回り込む光りも見えているハズです。雲に隠された月が顔を出す時、雲の輪郭が光っていますよね。手前にガスがあるとしたらあんな風になると思うのです。正解は、どちらなんでしょうか?
この海嶺全体は、わずかなHa輝線で光っていると思われますが、それにプラスして、上方向(北)にある恒星の青い光りをうけて、北面側が、微妙に光りを散乱し、かすかな青いベールのように見えています。その背後にも星があるらしく青い光りが漏れているのがわかります。複雑な照明効果ですね。
海嶺の南側(下側)は影になり、拡散反射がないため、非常に暗くなっています。これが本来のHaで光っているガスの明るさでしょう。そしてその海底に落ち込む手前に、ハービックハロー天体、HH1、HH2があります。
CGによる原始惑星系円盤から吹き出すジェット
(C)「はやぶさ」大型映像制作委員会
ハービックハロー天体とは、恒星が形成される途中で、自転の極軸方向に吹き出した高速なガス(数百km/秒)が周囲のガスと衝突し、光っている部分のことを指します。下の画像のちょうど中央付近に、原始惑星系円盤があると思います。ちょうどそれを横からみている格好ですね。
左)私の画像 右)ハッブルが捉えた同領域です HH1&HH2 (C)Hubble Heritage Team
上の画像で示したのがHH1とHH2です。比較の為に、右側にハッブル宇宙望遠鏡が捉えた画像を載せておきます。解像度はまったく違いますが、特徴となる形状や星の位置が同じで、ワクワクします。ハッブルが捉えたものは、何か別世界に思えますが、それを自分で撮影すると、本当に現実に存在している世界なのだと実感出来ます。アマチュアの撮影は、解像度ではハッブルにかないませんが、「宇宙を実感する」という目的においては最高の手段です。
このNGC1999の領域には、良く見ると、こういう形状がいたるところにあるのがわかります。
ということは、惑星系も同時に形成されることを示し、私達の太陽系は宇宙で珍しい存在ではないということになります。はたして、そこには生物がいるのでしょうか? 宇宙から生命が生まれるのは、必然なのかもしれませんね。
非常に、非常に、暗い対象です。Ha(20分露出)を18枚も撮りました。それでさえSNが非常に苦しいです。16Bitレンジ65535-ADU中、50-ADU程度の明るさしかありません。なので、今回は、このページで見られるサイズしか公開していません。
制作途中で「いっそのこと、暗いままにしておこうか...」とも思いましたが、このような発表形態では、それでは魅力ある絵にならないことがわかりました。暗室で、大画面で、しかもきちんと調整されたモニターで見た場合には、「暗いものは暗いまま、その奥行きを見せる」という方法もあると思います。
よって今回は、逆にとことん暗部を出してみることにしました。そこで問題になるのが、明部を犠牲にせざる得ないこと。暗部を出して、しかも明部も出すということは、不自然な絵に繋がります。今回は明部のディティールはあきらめ、素直な輝度感を狙いました。