この暗黒帯の乱れはただことではありません。
立体的に変形が起き、銀河の赤道面から上下方向にもうねっているように見えます。調べてみると案の定、スターバーストが起きていて、沢山の星々が、そこで誕生しているようです。
ここまで形がくずれ、激しい星形成が行われるためには、この銀河になんらかの大きな力が働いたものと思われます。しし座のこのあたりは銀河が数多く存在しています。これらの銀河は見かけだけではなく、空間的にも近い距離にあります。
M65(2200万光年)、M66(2400万光年)、NGC3628(2900万光年)、M96(2650万光年)、M105(2600万光年)などがあり、「しし座銀河群」と呼ばれていますが、これらの銀河が、このNGC2903になんらかの力を与えたのでしょうか。しかし、このNGC2903は、地球からの距離は同等なのですが、それらの銀河とはかなりの離角があります。だから、相互作用したというのは、ちょっと考えにくいですが、どうなんでしょうか。
この銀河は棒状のコアを持っているように見えますが、目を引くのはコアから右下に伸びる鋭い光のラインです。中心部からまっすぐに暗黒帯を突き抜け、右下に伸びています。しかも腕として曲がる部分が特別に明るくなっています。HII領域とは違ってコアと同じ色をしています。
えっ、まさか...
...まさか、この銀河は、二つの銀河が合体した姿なのでは?
この明るい部分はもう一つの銀河のコアの名残だったとしたら...まさかね(笑)
誰か調べてる人、いないでしょうか?
今回の作品は、撮影してから処理するまでにほぼ半年が経過してしまいました。コンポジットまではしてあったのですが、時間が空いてしまったので、どんな意図でコンポジットしたものなのかが、まったく解らなくなってしまいました。これはきちんと明記しておいた方がいいですね。NGC2903_L-Compo6_HD.ftsなんて書いてあるんですが、HDの意味が明確にわからない。調べて見るとHight Definitionの意味らしく、シーイングの優れた画像のみを選択したものでした。略語は使わない方がいいかも...です。「シーイングの良い6枚」と明記した方がよっぽどいいですね。
ほとんど定番の処理しかしていません。輝度の高い部分にはリチャードソンルーシー法で画像復元してマスク合成。輝度の高い部分に強い彩度強調です。しかし、撮影素材がよかったので、わりと簡単に高解像度を得ることができました。こんなによい素材がハードディスクで眠っていたんですから、まったく勿体ないことです。
中心部分だけ、さらにスマートシャープ処理(PS)をしています。暗黒帯の複雑さを出したかったので、ぎりぎりまで解像度を追求しました。もうほんとうに”ギリギリ”の状態で、これ以上やるとノイズが見えてきて品位を下げます。
上の画像は、色も違いますが、画像処理も違います。左は、シーイングの良い6枚のみで作った画像。右は中心部はその6枚で、周辺は12枚のコンポジットです。SNが上がり、銀河の淡い腕が無理なく出ていると思います。星にはシャープ処理をかけていないので、星の表現が柔らかくなっています。また、右には中心部にだけスマートシャープをかけています。違いがわかるでしょうか。
少々HII領域を強く出し過ぎたかもしれません。
PGC27115