“宇宙に出来た界面”
暗黒星雲が周囲の空間とせめぎ合う境界が、ちょうど水と油のように見えます。
実際は、複数の星による複雑な恒星風による攪乱が起こったのでしょうが、どうも水と油が混じり合わない動きを思い出させます。しかし暗黒星雲はまだしも、相手は真空ですから、それがこの形状を説明する原因でないことは、言うまでもありません。
この特異なパターンは、暗黒星雲の中で生まれた星が、その恒星風によって星雲を押し広げている途中の光景なんじゃないでしょうか。画面下部、中央に見えている明るいエリアを中心として、その力が働いてるとしたらどうでしょう。
そして、この画面左上遠方にはデネブが有り、そこからも緩やかな恒星風が左下に向かって流れている。その為に、流れるような薄いスジ状のガスが見えるのではないかと思うのですが...
そしてその押し広げる動きとデネブからの風が乱流を生み、小さな渦のパターンを作り、そこここに、黒い固まりを作ったのではないでしょうか? そして、この「コブ」は、そのうち自重で収縮し、グロビュールとなり、その内部に星のあかりを灯すでしょう。
上の画像は、ちょっとアングルを変えたものです。
中央に見える、割と固めのガスの柱は、すでに、凝縮が始まっているように見えますね。ディティールの大きさから、この柱が奥にあるものだとすると、押し広げている恒星風は、画面奥から手前に向かって広がっていったのかもしれません。
恒星風が到達した場所で次々に凝縮が起こって、星が生まれる動き。
私達の生命時間のスケールが今より100万倍も遅かったら、 さぞ素晴らしい光景として捉えることが出来るでしょう。
これら分子雲の形状は、地球で見る雲と非常に似通った形を持っています。地球上の雲と大気との密度比、分子雲と真空との密度比は、ひょっとしたら非常に近いものかもしれません。
分子雲:真空 103〜106個/cm3:1個/cm3(仮に...)=100:1
雲 :大気 【予想値】 2.543*10^27個/cm3:2.543*10^25個/cm3=100:1
カラー画像は、RGBのみ。L画像は、R+G+B+Haです。Haのブレンド具合を変えることによって、星と星雲のシャープさ。星マスクと組み合わせて使うと、星のみを小さくすることが出来ます。今回、そのあたりの度合いのコントロールはしていませんが、ステライメージのスターシャープなどを使わない素直な星像縮小化手法として、使える方法だと思っています。
赤い星雲をバックに星を表現するのは、LRGB合成にとってとても難しいことです。これはL画像の星像と、RGB画像の星像の大きさに差が出来る為にハローが盛大に起きる為です。さらに、L画像にHa画像を加えることで、星像をRGB画像よりも小さくしているので、尚更です。これを避けるには、前にも書きましたが、RGB画像に明るさの最小値フィルターをかけることです。M17のページに詳しく説明してありますので、ご覧ください。
*クロップする前の画像です。