おそらく全天で1番美しい二重星団でしょう。
画面で、左がNGC884(χ)、右がNGC869(h)です。
昔、この対象を星団と思わず、星として認識していたために、バイヤー符号がついてるという話しは有名ですね。通称、h+χ・エイチカイ星団。
昔このあたりには、濃い分子雲があったのでしょう。その中で次々に星が生まれ、星が密集したと想像出来ます。そう言う点では球状星団の生い立ちと同じですね。ただ、その規模、質量がまったく違います。散開星団は、星の数が何百程度。しかし球状星団は数十万の単位です。球状星団はその圧倒的な質量から、より星が密集する方向に向かいますが、散開星団は、おそらく拡散の方向に向かうと思われます。宇宙の時間スケールから見ると、この美しい二重星団が存在している時間は短そうですね。
青白い星々の中にオレンジの星がありますが、これはこの2重星団とは離れた位置にあるものと思われます。
星の一生は、その重さによって変化します。質量の大きな星はどんどん燃料を使って、短い時間で一生を終え、小さな星は、少しずつ燃料を使って長い時間を生き抜きます。例外を除けば、共に青白い星として誕生し、赤い星になって一生を終えます。
散開星団の星は、ほぼ同時期に生まれたこと。そしてこの星団は生まれて間もないと言われていることから、いくら質量に違いがあったとしても、その進化にこんなに差が出るはずがありません。だからきっと3次元的に見ると、離れたところにあるはずです。
赤い星の絶対等級は暗いので、私には、オレンジ色の星は星団の手前にあるように見えます。
散開星団は私のギャラリーの中では珍しい部類にはいります。ある程度広い視野が必要であり、私のシステム(焦点距離)にはあまり合わない対象だからです。ということで今回は2フレームのモザイク撮影を行い、視野を広げました。
モザイク合成はまず最初にモザイク合成を行って大きな視野にしておく方法もありますが、今回は別々に仕上げて最後にフォトショップCS3のPhotomergeで1フレームにまとめました。後合成の利点は、個々のモザイクフレームを別々に調整が出来るので、トーンを合わせることが出来ること。画像サイズが小さい状態でファイルが扱えるので、ストレスがかからない、モザイクフレームの合成誤差をごまかせる点にあります。しかし、結果的にいうと、今回はモザイクフレーム毎にトーンのバラツキもなく、2フレームだけでしたので、前処理でもよかったかもしれません。
*ちなみに前処理の場合は、MaxImDLのモザイク合成機能を使います。これ、かなり優秀です。
ガスの無い散開星団の画像処理は、非常にやさしい部類に入ります。
星のみをターゲットにして処理を行えば良いし、星のディティールは出しようがないので(笑)、ほとんどやることがありません。...しかし、だからこそ難しいのです。何の要素もない。表せるのは、星の輝きだけ。暗い星と明るい星との明度差や、色の変化ぐらいしか「手」がないのです。結局以下の処理しかしていません。
*モザイク合成なので、L画像は撮っていません。RGB撮影のみです。
1)LをRGBから作り、デジタル現像をかける。
2)RGBにデジタル現像をかける。
3)フォトショップでLにスマートシャープをかける。
4)フォトショップでRGBをLabに変換し、そのLチャネルをスマートシャープをかけたLで置き換える。
ここで1番肝要なのは、デジタル現像のレンジとハイライトパラメータの設定です。
絵柄を変える要素は、ほぼこの一点につきます。別の意味で難しい対象です。
少々露出不足。10分露出、しかもRGBのフィルター撮影ですから、暗い星があまりうつっていません。20分露出のLを追加するとグッと良くなるでしょう。
NGC884(χ)
NGC869(h)