赤緯-20度を越える低空にあるため、条件の良い時に撮影するのが非常に難しい天体です。下のデータを見て貰うとその苦労の後がわかると思います。Rが3フレーム、Gが4フレーム、Bはなんと2フレームしか用意出来ませんでした。撮影日時もほぼ一年前(現在2008/09/05)、今年こそ追加で足りない画像を撮れるかと思ったのですが、まったく晴れず、あきらめて画像処理にいたりました。しかも冷却温度が−10℃の為ノイズが多く、なかなか大変な処理となりました。
ノイズを極力減らすために、レンジ500のバージョンと、レンジ1500のバージョンを用意しました。暗いところにはレンジ1500を使ってノイズを減らし、明るい部分は、500の方を使って、これらをマスク合成してあります。
もうすこし、露出時間をかけて、外縁部の暗い腕を写し出したいところです。天候が問題です。南天で、高々度にあるNGC7293を撮ってみたいです。
この惑星状星雲の一番の特徴は、非常に大きいことです。月の2/3位の大きさで見えています。少し前までは、全天で一番大きな惑星状星雲とされていましたが、2004年、 ろくぶんぎ座に「Hewett 1(ヒューイット ワン)」という10度x16度の驚異的な大きさの惑星状星雲が見つかり、その座を譲りました。
ただ、非常に暗い対象なので、肉眼で見ることは出来ません。もし、この星雲が明るく、肉眼でもこの画像のように見えていたら...と思うと恐ろしくなりますね。かなり異様な光景が夜空に広がることでしょう。さながら、夜空に浮かぶ「巨大な目」です。この星雲には、「神の目」という別名があるそうで、この想像は、あながち独りよがりのものではないかもしれません。
この惑星状星雲も他のものと同じように、大きな2つの球体が前後に重なっているように思えます。これは典型的な惑星状星雲の構造ですね。M97のページに3DCGで立体像を示しましたが、まさにあのように手前と奥方向に球形状のガスが重なっていると思われます。「らせん星雲」の別名がありますが、それは見かけの話しであり、実際には、このような形状だと思われます。
しかし、ちょっと特徴的なのは、このガスの球体が幾十にも入れ子になっていることでしょう。
少し引いた画角で見ると、このことがハッキリとわかります。恒星が惑星状星雲になるまでの間に、何度かにわたって脈動をおこした為と思われます。
アップで見ると、その激しいガスの流れが見て取れます。
中心から尾を引くように伸びるいくつもの彗星のような構造。これがそのガスや恒星風の強さを物語っています。よく観察すると、励起していない黒っぽいガスも筋状になって、かすかに見えていますね。恒星のガスは、その成分から考えて励起して自ら光を出すと考えられるので、このダスト、もしかするとこの恒星が従えていた惑星の最後の姿かも?しれません。
また、この放射状に伸びる彗星の尾のようなものが、中心の一点に収束していないのがわかるでしょか。それはこれらが3次元的な球状に分布していることを示していると思います。このベクトルを計測すれば、逆にそれが3次元的にどんな位置にあるのかも、計算出来そうですね。
興味は尽きません。