1. 星の画像から真実を想像する楽しさ

GalLEry/はじめに

 

実はわかっていないことの方が多い

 夜空にはさまざまな形状を持った天体が沢山あります。ハッブル宇宙望遠鏡をはじめ、現在の天文学は宇宙の謎をどんどん解明していっていますが、実はまだわからないことの方が多いのです。

「なぜこんな形をしているのか?」

こんな素朴な質問に答えられないことが沢山あります。だから、星の写真を見ながらあれこれ想像するのはとても楽しいものです。新しい真実が見つかるかもしれませんし、また逆に、出した結論が、すでにわかっていたことだとしたら、答え合わせが出来て面白い。

 このページでは、いくつかの簡単な「星の規則」を書いておこうと思います。ぜひご自身で「星の画像を理解する」楽しさを感じてください。


天体はなぜ見えているのか?


 光っているから見えているのですが、自ら光っているものと、光りを反射して見えているものの2種類があります。そのことをきちんと理解しておくと、その天体が今どうなっているのかを想像出来ます。


 1)自ら光っている天体

  1. 箇条書き項目温度が高い為に光っている天体 ー 【 恒星など 】
    太陽などの恒星がこれにあたります。恒星内部で核融合が起こっており、この熱で光って見えます。また白色矮星などは核融合を起こしていませんが、まだ高温の為、光って見えています。青く見えている星ほど温度が高く、赤く見えているものは温度が低いです。

  2. 箇条書き項目紫外線により電離され、光っている天体 ー 【 散光星雲、惑星状星雲など 】
    星間ガスは紫外線を受けると電離し自ら光りだします。物質の種類によって、光る色が変化します。水素は赤く、酸素は緑に、ヘリウムは青に発光します。この為、色を観察すれば、そこにどんな物質があるかを特定することが出来ます。また、弱い紫外線でも、水素ガスは電離されますが、ヘリウムや酸素はそれよりも大きなエネルギーを必要とします。よって青や緑が見えないからといって、それぞれの物質がないとは言えません。

 2)他の光りを反射している天体 ー 【 惑星、反射星雲 】

  1. 箇条書き項目恒星の光りを反射、散乱することにより見えているもの。自ら光りを出しているわけではないので、その光りの性質は、元の恒星のものになります。光りの波長に対する粒子の大きさによって、散乱の仕方は変わります。ガス星雲などの場合は、十分に粒子が小さいので、レイリー散乱と呼ばれている散乱が起こり、散乱光が青くなります(もちろん元の恒星の色も関係します)。M45・すばるやM20・三裂星雲の上部などの青い星雲は、まさにこの状態です。


恒星内部でおこる元素の生成

 ちょっと深呼吸してみてください。その行為により、今一千万個ほどの酸素分子が肺の中に入りました。しかしこの酸素原子は、遠い昔、恒星の内部で作られた物だと言われたら信じられるでしょうか? 宇宙にははじめ水素とヘリウムしかなかったと言われています。それらが核融合という段階を経て酸素になったのです。

 核融合は高温になった恒星の中心部でおこります。水素が核融合をおこすとヘリウムが生成されます。核融合で生成された新たな物質は、再びそれ自身が燃料となり次のステップの核融合をおこしていきます。ヘリウムによる核融合で炭素。炭素による核融合で窒素。同様に酸素、ネオン、マグネシウム、ケイ素、鉄の順番で元素の形成が進みます。だんだんと重い元素が出来るわけですが、重い元素ほど高い温度と圧力を必要としますので、どの段階まで核融合が進むのかは、その星の質量により決定されます。

 ちなみに太陽は現在、水素の核融合反応で光っています。また太陽程度の質量の星では、酸素の段階で核融合がストップします。またどんなに質量のある重い星でも鉄以上には反応が進みません。それ以上の重い元素は、超新星爆発により作られるそうです。 地球上で普通に見ることの出来るほとんどの物質はこのような過程を経て生成されたもので、決して地球上で作られた物ではありません。驚きを禁じ得ませんね。


 この過程で面白いことが起こります。恒星は中心部ほど高い圧力を持つので、中心部ほどより高次の核融合が起こり重い元素が生まれることになります。よって、タマネギ状に各物質が層を作ることになります。ここで重要なのはその物質の順番です。恒星は最後に拡散するか爆発を起こしますが、その際に花火のようにそれらの物質をまき散らします。まき散らされた物質は色(輝線)によって見分けることが出来るので、恒星の「物質の層」を想像する手がかりになります。



星の一生

 そこに写っている物が、星の一生のどの時期にあるのかを知ることはとても大切です。星の一生、その変化は、何百万年から何百億年というとても長い時間をかけて行われます。星の寿命は、その重さによって決まります。重い星ほど、早く燃料を使い果たしてしまうので短命、軽い星ほど長生きします。幸いなことに、宇宙には、沢山の星々があり、さまざまな進化の過程を見ることが出来ます。ここでは簡単にその過程をたどってみましょう。



・誕生

 星間物質(主に水素)がなんらかの不均一な密度を持ち得た時、そこに引力の不均衡が生まれ、ある場所の密度がどんどん高まります。恒星風、超新星の爆発、銀河同士の衝突など、さまざまな要因でこの密度変化はもたらされます。密度が高まると、温度が高くなっていき、光りを発し始めます。中心部の温度がある限界点を越えると、水素の核融合反応が始まり、星が輝き出します。しかしこの段階では光りは周りのガスに阻まれ、観測することは出来ません。

 周りにあるガスは、この星を中心に回転運動を始め、リング状の雲「原子惑星系円盤」を作る場合があり、この中に惑星が生まれるのではないかと思われています。


 これらのガスは、しばらくすると、恒星自身が放出する物質の圧力や、近隣にある恒星からの圧力によって、はぎ取られて行きます。ここでやっと外部から星の誕生が認識出来ます。



NGC1333

  1. 中央の暗黒星雲の中で、今まさに星が誕生している。

  2. 赤く見えているのは、誕生している星から出ているジェットの流れ。

  3. 原子惑星系円盤も確認されている。



・青年期〜老年期

 こうして星が誕生し、しばらくは安定した状態で水素の核融合が進みます。太陽はまさに今、この状態です。この安定期に入った恒星のことを主系列星といいます。その燃料である水素を使い果たすころ、 太陽程度の質量の星は、 膨張をはじめ赤色巨星となります。太陽の場合は、金星軌道程度まで膨張すると言われています。そして広がった外層は、恒星の引力から解き放たれ、ゆっくりと外の空間に向かって広がっていきます。広がっていったガスは中心に残った恒星のコアが放出する紫外線で照らされ、電離し、光り始めます。これが惑星状星雲です。そのガスの大きさは何光年にもわたります。このとき、広がっていく物質の種類によって、発光する色がかわるので、惑星状星雲にはさまざまなバリエーションを見ることが出来ます。


 赤色巨星の表層のガスが広がっていくのは通常ゆっくりしていますが、恒星の質量が大きいと、短い時間で勢いよく外層を吹き飛ばし、コアが露出します。このような星をウォルフ・ライエ星といいます。強く吹き飛ばされたようなガスの形を見せる星雲の中心には、大抵この星があると言っていいでしょう。


 コア部分では、水素の核融合反応で出来たヘリウムが核融合反応を起こし始めます。そして、次は、ヘリウムの核融合反応で出来た窒素が核融合反応を起こします。このようにして、酸素、ネオン、マグネシウム、ケイ素、鉄の順番で、次々に核融合反応を繰り返していきます。どの物質まで核融合が進むかは、恒星の質量によります。太陽程度の質量の恒星は、窒素や酸素の段階で止まると言われています。核融合が止まったコアは白色矮星と呼ばれ、何十億年もかけて冷えていきますが、光りや紫外線などを放出しつづけます。



・死そして再生へ

 太陽の8倍程度の星は、鉄の段階まで核融合を続け、最後は超新星爆発を起こします。ひとつの星で銀河全体に匹敵するような光りを一瞬で放出し、あとかたもなくコアは消え去ります。そしてその残骸はものすごいスピードで広がっていきます。

 星の重さが太陽の10倍から20倍程度になると、超新星爆発をした後でもコアが残り、中性子星になります。これは中性子だけがぎっしりと詰まったとても重い星です。この状態で有名なのが、かに星雲ですね。中心部の中性子星からは、強い電波が発せられています。

 さらに、重い星。30倍以上の質量をもつ恒星は、中性子星になってもその重力をささえきれず、ブラックホールになると言われています。


 最後に救いがあるのは、こうして飛び散った星の残骸は、またあたらしい星を作る材料になることです。超新星のコアでしか作られない重い元素もこうして吹き飛ばれた結果、原子惑星系円盤を経て惑星になっていることは、とても感慨深いですね。


 





















球状星団/M13



輝線星雲/NGC6888



反射星雲/M45・すばる













M57

恒星の物質の層が、ガスとなって広がっていくので、このような色の変化をもたらします。














NGC281・パックマン星雲 
黒く見えるガスはボッグのグロビュールと呼ばれ、この中に生まれたての星が隠されている。








NGC2392

惑星状星雲。年老いた星、赤色巨星が放つガスの広がり。



NGC7635・バブル星雲

バブルの中央やや右に光っているのがウォルフ・ライエ星です。





M1・かに星雲

星の最後、超新星爆発の残骸